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ビジネス雑談

安売りはしてはいけないと思った話

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この話は随分以前の事で、このお客様は現在もう廃業されています。

普通で考えれば安売りではなく十分利益を含めた適正価格で販売するべきであると思いますが、どうしても売上が思う様に上がらない時にはこの安売りに走ってしまう心理になるのです。
当然、私も同じような経験をしていますから気持ちは痛いほどわかります。
してはいけない、しかしこれしか方法が思いつかない。

しかし私はこのお客様を見て、自分は値段を下げる事はやめておいた方が良いと判断したのです。

今日はその事を記事にします。

大阪府北部の自動車鈑金工場さん

大阪府北部で独立開業された方です。
年齢は聞いた訳ではないですが、おそらく当時私と同じぐらい30代前半だったのではないかと思います。年齢が近い事もあり話は非常に合いました。

今も取り扱いはしていますが、自動車鈑金工場さんが使用している見積システムを導入させて頂いたのが縁です。

このような基幹業務のシステムを導入して頂くと基本的には操作指導もさせて頂きます。訪問するペースはお客様の希望で決まるのですが、このお客様の場合は合計三回を週に一回のペースだったと思います。

何度も訪問していると色々な話をします。

年齢が近い事もあり、何度も訪問していると自然に色々な話をします。
特に当時は私も独立した時期でもあり、親身に話を聞いたりしたのです。

しかし残念ながらガレージに車の入庫はありません。

「どうですか?」と聞くと

「全然お客さん入庫ないねん!」 とため息まじり

開店に合わせてホームページを作成したり、新聞折り込み等をしたらしいのですが、全然反応がないらしいのです。
しかも聞けば元々自分のお客様もいないらしいのです。
この業種は飲食店やスーパーのような小売りと違い一見のお客さんを対象にしている感じではありません。ほとんどが横の繋がりで仕事をまわしています。
その横の繋がりもないらしく、その時はよく独立したな~と思いました。
当時流行ったカー何とか倶楽部もありましたが、店舗は大通り沿いで店もそれなりに一見客が入りやすい感じです。
しかしこのお客様の立地は工場街の入り組んだ場所で、一見客は望めません。
加入の検討は聞きませんでしたが
カー何とか倶楽部も加入するのに、それなりの資金が必要だったのでしょう。

色々アドバイスしたけれど

操作指導が終了してからも気になっていたので暇があれば訪問しました。

あいかわらず入庫はありませんが、この方は何かするわけでもなく

「赤字や! 赤字や!」と言うだけです。

でもね!これはしょうがないんですよ!
今までそんな経験した事がないんです。
だって今までは車の修理をしていたらよかったんですから、自分でお客さんを探しに行くなんて事はしたことがない。
そんな人に急に営業してこいなんて言ってもその方法もわかりません。

よくそんな事で独立するなと思うでしょうけど、大昔、私達から一世代上の自動車整備工場や鈑金工場はほっておいてもお客さんが来た時代があります。その当時は今とは違い値段が良く本当に良い商売だったらしいのです。
今はユーザー車検などがあり値崩れしていますが!
悪く言ってしまえば「車検やってあげようか?」ぐらいのスタンスで仕事していた人が珍しくなかったんですよ!

そんな人達に教育された人が営業なんか出来ません。
どちらかと言えば職人なので車の修理方法はキッチリと叩き込まれています。

誤解があるとダメなので申し上げますが、今はそんな事はありません。

私は営業の経験もあるので集客のお手伝いを提案したのですが、この件に関しては聞き入れてもらう事はありませんでした。

プライドがあったのでしょう。

半年後ガレージには車がいっぱいに!

開店から半年ほど経過した頃に訪問すると
なんとガレージには車がいっぱいに入庫しているではないですか!

「社長! 車がいっぱいやないですか?」そう声をかけると

社長は「そやねん 忙しいなったわー」と嬉しそうです。

私は良かったらと思い
自分で何とかするなんて、この社長も根性あるなと感心しました。あの時の暇な状態からしたら天と地ほどの差です。

しかも一人で全部やっているから一週間に一日ぐらいしか帰っていないらしく毎日工場で寝泊りしているらしいのです。
しかしまだ若いし自営であればこれぐらいの苦労はみんな経験しています。
社長の顔も精気がありますし、なによりやる気に満ちています。
私は「じゃー 頑張って下さい。」と言い残し帰りました。

まさか そんな状態とは・・・

それから2か月ほど経過したある日に訪問しました。

あいかわらず車でいっぱいです。

しかし・・・

社長を見ると 申し訳ないですがこの2か月で10歳ぐらい老けた感じです。

髪はボサボサ ひげは伸び放題 目にクマができ全体的にやつれた様子で別人のようです。
以前と比べればあきらかに精気はなくなり、やる気もなさそうです。

私は「忙し過ぎなん違います?」と言うと

社長は「忙しいのはええねん!」と言いました。 続けて

「こんなに忙しいのに赤字やねん!」と泣きそうです。

詳しく話を聞くと
いっぱいに入庫されていた車はある車関係の業者らしく、しかも値段もそうとう値下げされたそうなんですが、仕事がほしくてやむなく承諾したらしいのです。

この話を聞いた時に私は思いました。
仕事が暇で赤字であれば暇を無くすためにお客様を増やす努力をすれば良い。
しかし仕事が忙しくて赤字であればどうしようもない。
(本当はどうしようもない事もないですが!)

頭では値段を下げて仕事をとる事はよくないとは理解していましたが、目の前でこの光景を見てしまうと心底そう思いました。

最後はあっけなく

私はなんとかうまくいってほしくて聞く耳がない事を承知の上でアドバイスしました。この業者の仕事を少しづつで良いから減らして料金の良いお客様を増やしていきましょうと、そのための集客のお手伝いをする事を約束しました。

さすがにその時は私の提案を聞いてくれて、そうしようと言ってくれたのですが、私が止めていた事を先走り行ってしまったのです。

それは、その車関係の業者への値上げ交渉です。
私はそれについては止めていました。
なぜならそのような業者は値段で仕事を発注していますから値段を上げると簡単に発注を止めます。
いくら私がお手伝いすると言っても急にお客様が増える訳ではありません。とりあえずお金をまわすためにはその業者の仕事がスグに無くなる事は避けたかったのですが・・・

社長はその交渉に私に黙って行ってしまったのです。

私が社長に「相手はどう言ってました?」と聞くと

社長は笑顔で「わかった!」と言ってもらえたで と言いましたが・・・

私は申し訳ないですが、「この人は何にもわかってない!」と嘆きました。

その後は私の思った通りその業者から仕事の依頼がくる事はありませんでした。

社長はそれがショックだったのでしょうか翌々月には廃業を決断したのです。

最後に

元々頭では理解していました。
価格を低く設定してはいけない事を!
皆さんもそうだと思います。
しかしこの実体験で本当に取り返しがつかない状況にまでになる事がある!
その事を目の当たりにして本当に良い勉強をしたと思いました。